山と海、ふたつの熊野

”熊野”に行ってきました。
といっても、熊野にも2つあるのをご存じでしょうか。

一つは、”熊野詣で”や”熊野古道”で有名な、参詣地としての「熊野」。
もう一つは、三重県南部の海岸沿いに広がる「熊野市」です。

細かい話をしますと、この2つの熊野は、かつて”南紀”や”牟婁(むろ)郡”に所属し、元々は一つだったんです。
それが色々な変遷を経て、三重と和歌山に分かれ、今に至ります。


元々”花の窟神社”に行きたかったんです。
ただ、このあたりの地域で行きたい場所があまりなく。
そんな中、「凪のあすから」の聖地がその近辺だということを知り、「これだ」と思って、あわせて訪れることにしました。

そして、4年前に行った熊野三山参りで、唯一回り切れなかった熊野本宮にも行くことにしました。
そして、CLANNADにゆかりのある滝尻王子にも行くという、強行軍のようなそうでもないような日程が組み上がりました。

正直、予定を組む余裕もなにもほとんどなかったのですが、うまくいきました。
泊りの旅行としては、去年の8月振りと、とにかく久しぶりだった長旅の様子をご覧ください。

1日目
まずは凪あす巡礼から。

紀伊長島
「凪あす」に出てきた造船所があるところとして有名な紀伊長島。
緑いっぱいで活気あふれる漁師町です。

いきなり巡礼とは関係なくなりますが、行った方はぜひ「道の駅 紀伊長島マンボウ」に寄ってほしいんです。
私の場合は、レンタサイクルを借りに行くだけのはずでした。
ただ、そこにあったのは、あふれんばかりの熱気と活況。
いきなり圧倒されました。
ここではとても珍しい、クジラやらマンボウ等が食べられるので、本当にオススメです。

道の駅「紀伊長島マンボウ」

道の駅の盛況の様子。クジラの串焼きも売っている

道の駅近くの風景

紀伊長島は色々見所があるところで、レンタサイクルで駆け回るにはうってつけでした。
巡礼以外にも、港町らしい建物が立ち並ぶ”魚町”や、ループで名高いアルファ橋など、見所はたくさん。
アルファ橋は私も自転車でかけ降りましたが、ものすごく気持ちよかったです。

話題の造船所までの道も、自転車をこぐにはうってつけの道。
ただ単に見て回るだけではなく、そういった爽快感も間違いなくありました。

長島港

魚町の様子

ループになっているアルファ橋

港町の風情漂う街並み

漁港の様子

マンボウ

長島造船
「凪あす」で印象的な場所として使われているのが、この長島造船です。
中に入ることはできませんので、外観のみですが、国道沿いにでっかく存在していますので、とてもわかりやすいと思います。

長島造船所

横須賀に行ったのでドライドックかどうかの判別がつくようになりました

完全一致ではありませんが、造船所を背景にした踏切なども、しっかり存在しています。

長島造船所向かいの踏切

二木島
場所を移して今度は二木島(にぎしま)に。
今後紹介するところにも共通しますが、基本的に「凪あす」の聖地が点在するJR紀勢本線は、本数自体が少ないうえに特急が止まるのは紀伊長島くらいですので、交通手段には検討が必要です。

鷲大師(おしおおし)漁港のモデルがある地域です。
なお、いちおう周辺を歩き回ったのですが、徒歩圏内には何もありません。
普通に漁港の二木島支所として使われている建物なので、前に行って写真を取るのはやや心の強さが必要かな、とは思います。

漁協二木島支所

二木島漁港

景色はかなりいいですね。
夕方の雰囲気はよかったです。

夕日を背に受ける二木島港


2日目
引き続き「凪あす」巡礼と、このあたりから熊野古道・世界遺産巡礼が混ざりはじめます。
この日はとてもよく晴れていました。

花の窟神社
とても巨大な岩がご神体の、世界遺産にも登録されている神社です。
このご神体、岩どころかもはや岩壁です。
岩がご神体という前情報はあったものの、そのスケールの大きさに口があんぐりと空きました。
新宮の神倉神社(ゴトビキ岩)もそうでしたが、これが東紀州の特徴なのかもしれません。

本殿などの建物は一切ないのですが、一度見ておくべきだと思います。

世界遺産・花の窟神社

この奥にご神体が

巨巌

巨巌全景

御綱掛け神事

境内にある稲荷神社

七里ヶ浜
花の窟神社に行く際に、本来はこちらの方を先に目にすることになるんですよね。
熊野市の海岸線に広がる広大な浜です。
本当に綺麗な浜で、寄せては返す波がとても印象的でした。

世界遺産・七里ヶ浜

押し寄せる波

ちょうどこいのぼり祭りをやっていたようで、こいも多数泳いでいました。

七里ヶ浜になびくこいのぼり

獅子岩
その七里ヶ浜に鎮座するのが、この”獅子岩”。
上のほうが師市の頭に見えるというのが、わかるでしょうか。
あとで触れる”鬼が城”とも共通しますが、熊野市の海岸沿いに特徴的な構成物です。

世界遺産・獅子岩

新鹿
やや北上して、「凪あす」の鷲大師のモデルとも言われる熊野市新鹿地区へ。
これ、地名が読めないと思います。
「あたしか」と読むんです。

JR新鹿駅

数々の巡礼者が考察を重ねている地区で、「凪あす」の背景になった場所が多数あります。
ただ、そこまでインパクトがあるところも少ないので、前情報を持った状態でないと、なかなか見つけづらいかな、と思います。
なお劇中に登場する「サヤマート」のモデルとなったお店はお休みのようでした。

「サヤマート」のモデルと思われる清七屋ストアー

MIU(意味深)

「凪のあすから」第17話その1

「凪のあすから」第17話その2

「凪のあすから」第1話

「凪のあすから」第20話

徳司神社

”御木曳”という神事を取り行っているらしい

むしろ、本来は新鹿海水浴場が有名なところになります。
それだけあって、新鹿湾と砂浜、そしてそれを囲むように存在する山の緑はとても綺麗でした。

新鹿海水浴場とその周辺





新鹿海水浴場遠景

凪あすとは無関係ですが、この読みは……

「凪あす」の象徴的なところになります”上に何も乗って無い橋脚”のモデルとも言われるところは、ゴールデンウィーク期間中のためか橋が架かっていたので、渡ってきました。
もしかすると、ロケハンの時期も考えると、あれは建設中だった高速道路の橋脚だったのではないか、という感じもします。

橋脚だけだった橋。ちゃんと橋がかかったようです

これ、けっこう怖かったです

旧新鹿中学校からの眺め

美濱中学校のモデル・旧新鹿中学校

波田須
電車がないので一駅歩きました。
※普通の方にはあまりおすすめしません。素直に電車、バス、タクシーをご利用ください。

「凪あす」のオープニングに登場する「JR波田須(はだす)駅」「天女座(作中は”人魚座”)」がある地区になります。
双方とも巡礼ノートが置かれているので、「凪あす」巡礼の中心地と言ってもいいのではないでしょうか。

国道からの眺め

歩いて波田須地区に

歩いてきたからこそわかった部分でもあるのですが、このあたり、景色がめちゃくちゃきれいです。
地域的には海と山が交わった岬”岬”のような感じになるんでしょうか。
空の青、海のあを、山の緑…全部が噛み合って、とても素晴らしい景色を織りなしているのです。
凪あす抜きでも、とてもオススメできる場所です。

これが波田須の原風景

この旅一番の眺望

JR波田須駅
前述のとおり、「凪あす」のOPに起用されたトンネルとホームがある駅です。
待合室には「巡礼ノート」が置かれ、電車が3時間に1本しかない、ある意味”辺境”にもかかわらず(凪あす以前は辺境駅として取り上げられていた模様)、私がいる間だけでも巡礼者が2組ほどいらっしゃってました。

凪のあすからOP「JR波田須駅 ホーム」

JR波田須駅待合室に置かれている巡礼BOX

天女座

凪のあすから第2期OPより「人魚座(天女座)入口」

国道からJR波田須駅に行く間に、このお店の看板があります。
「凪あす」の作中では、この看板が改変されて背景に移り込んでいました。
ただ、それだけなんです。

ただ、それを受けてこのお店は、本来はなかった「塩水あります」の看板を追加で設置。
今では「凪あす巡礼の中心地」としても人気を博し、多くの巡礼者でにぎわっています。
「巡礼ノート」もありますし、凪あすの設定資料集や漫画などもしっかり置かれています。
店の中もとても趣がありますし、景色もものすごくいいので、ぜひ訪問することをオススメします。

天女座の入口

巡礼ノートをはじめ、様々なグッズがありました

天女座玄関。巡礼抜きにも赴きいっぱい

鬼が城
熊野市大泊に鎮座する、自然が作り上げた奇岩群。
本来は普通に観光として行くはずだったのですが、直前に一部が凪あすのOPで使われている説が浮上。
一転、聖地巡礼も兼ねての訪問となりました。

たしか凪あす新OPでしたっけ

全国各地で、こういった奇岩や景勝地には行ってますが、これは明らかにスケールが違います。
東尋坊に楽に勝てるんじゃないでしょうか。
本当に、どちらを向いても驚きの声を上げざるを得ない自然の彫刻。
このスケールの大きさは、ぜひ一度味わっていただきたいと思います。

世界遺産・鬼が城の景色をご覧ください






ただ、自然というのは自然に淘汰されるものでもあるようで。
残念ながら、大部分が昨年の台風により入ることができない状態に。
観光協会に確認したところ、西ルートは全滅とのことで、今見られるのは東ルートの一部だけのようです。

昨年の台風被害によりこの先は行けません

川湯温泉
これで「凪あす」巡礼を終えて、熊野方面へ。

バスの車窓から熊野川

請川で見つけた神社ですが、これ「桜華」あたりのモデルになってないかな…

川湯キャンプ場。子どもたちがめちゃくちゃ楽しそうにしていたので、私もキャンプ目的でいつか行きたいです

温泉自体の写真はありませんが、ここの温泉はとてもよかったです。
露天風呂が川の横に鎮座していて、しかも屋内より高温に保たれているんですね。
全く湯冷めせず、寝る時点でもあったかさが継続されていました。
嘘だと思うかもしれませんが、これまでの疲れが本当にリセットされて、翌日は旅行1日目の朝よりも元気な状態でスタートしました。

川湯温泉郷


3日目
熊野巡礼の再開と、密かな野望のはじまり。
この日は一転、朝から雨でした。

滝尻王子
世界遺産登録時に、CLANNADの風子がポスターに起用された、あの場所です。
それだけでもう大感動です。

滝尻王子

CLANNADの風子出演ポスターの構図に一番近いショット

滝尻王子の祠と言っていいんでしょうか

一般的には、”中辺路(なかへち)”の九十九王子始まりの地として有名なところです。
滝尻王子をはじめとして、終点は熊野本宮。
この間に、たくさんの(九十九)王子という熊野詣でにおける休憩場所を設定した、これが中辺路と九十九王子の簡単な説明になります。

中辺路はここが起点となります

なお、今調べてみたら、CLANNADと熊野古道コラボって、かなりの数やってたみたいですね。
情報が全然現存していないので、ちょっと調べようもないのですが。

不寝王子
最寄りの不寝王子まで歩いてみました。

ちなみに、この熊野古道、山道とか獣道ってレベルじゃないほどの”酷道”になります。
「道なき道を行く」といっても過言じゃないでしょう。
過酷な山登り、それが熊野古道の本当のところだったりします。
訪れる方はしっかり準備をして登られるといいかと思います。

胎内めぐり

乳岩

不寝王子。近くの商店の方によると、このあたり(滝尻王子〜高原熊野神社)が一番勾配が大きいとのこと

不寝王子から滝尻王子に戻ったあたりで雨が降ってきました。


熊野本宮大社
熊野古道終着の地にして生誕の地とも言われる熊野本宮。
八咫烏がトレードマークです。

熊野本宮大社鳥居

思った以上に八咫烏推しでした

4年前、和歌山旅行で熊野那智大社、熊野速玉大社には行きました。
しかし、その時唯一行くことが叶わなかったのが、この熊野本宮大社でした。
これで、4年越しに熊野三山を無事制覇することができました。

本宮の本殿はさすがでした(撮影は禁止)し、大鳥居もよかったです。
ただ、私が一番圧倒されたのは、かつて熊野本宮大社があった”大斎原”だったんです。

拝殿

伏拝王子跡

熊野全体に霧がかかる

大鳥居

大斎原(おおゆのはら)

今は石の祠がポツンとあるだけで、あとは一面の緑しかありません。
ただ、この静謐とした雰囲気に、色々感じるものがありました。
昔に思いを馳せるには充分すぎました。

パワースポットの一言で片づけるのはあまり好きじゃないのですが、なんだか説明することができない不思議な魅力を感じました。
落ち付いた気持ちで訪れてもらうと、何か感じるところがあるんじゃないかと思います。

終わりに
なんとも不思議な旅でした。

訪問地の一つ一つが、そこまで大きなインパクトがあったり、圧倒されたりしたわけじゃありません。
ただ、今回は不思議と人と話をした旅で。
色々な現地の人と出会って、話をしたり聞いたりして。
そして、戻ってきた今でもしっかり頭に記憶されているんです。

旅行記を書くのって、どんなによかった旅行でも、多少は頭を悩ませたり、筆が止まったりするのですが、今回、殆どそんな心配もなく、一気に筆が進みました。


今回は、聖地巡礼が中心でした。
熊野市の海寄りを中心とした「凪のあすから」巡礼。
そして熊野古道をもとにした「熊野三山」巡礼。
CLANNADの風子のポスター探訪も、もう一つ巡礼に加えていいかもしれません。

確かに巡礼は一つの目的でしたが、それだけが楽しかった、というわけではありません。
「凪あす」で回ったところでは、凪あす以外の魅力で印象に残った所が多数ありました。
端から、同じアングルを撮影してこようとは思っていません。
同じアングルを撮るのではなく、現地でより良いと思った所をクローズアップして、楽しむ。
その舞台になった所を、本当の意味で探訪する。
それが、聖地巡礼と旅のうまい付き合い方なんじゃないかなと思います。


このほかにも、こぼれ話は沢山あって、書きたいことも沢山あります。
でも、この辺で打ち止めにしておきます。
それは、皆さんが実際に行ったときのお楽しみにしておきましょう。


いろいろなところには、いろいろな人がいて、いろいろなよさがある。
当たり前かもしれないけれども大事なことを感じた旅でした。



執筆 2014年5月6日
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