銚子・犬吠埼醤油紀行〜銚子電鉄に乗って〜



関東の東端に位置し、初日の出スポットとしても有名な、千葉は銚子・犬吠埼に行ってきました。

いつもであれば分単位の細かいスケジュールを組む私ですが、
なぜか今回はほとんど計画を立てずに現地入り。
しかし、それが効を奏し、とても楽しく、得るものが多い旅になりました。

東京スカイツリー
錦糸町駅で電車待ちをしているときに、ふとホームから外を眺めたらそこにはスカイツリーが。
浅草橋の隣駅なので、ちょうどいい地点なんでしょうね。
下手に近づくよりも、遠くからのほうが全貌が見えていいのかもしれません。

東京スカイツリー

銚子電鉄
今回の旅で決まっていたことは、「犬吠埼に行くこと」だけ。
行くのに銚子電鉄に乗ることは知っていましたし、
「ぬれ煎餅はお土産になるなあ」くらいは思っていたものの、
銚子電鉄自体に乗ったり、触れたりすることをを観光の目玉としては考えてもいませんでした。

ただ、現地に行って、そんな考えは一瞬ですっ飛びました。

銚子電鉄の車輌

まず一つに、観光ガイドが電車に乗り込んで観光案内をしてくれることです。
休日だったというのもあると思うのですが、観光協会の方がガイドとしてコンシェルジュみたいな感じで添乗してくれるんですね。
ただ、そのガイドの方がかっちりした感じでなく、非常にフランクなんです。
私のような話し下手でも話しかけられるような、とても話しかけやすい雰囲気を作ってくれているんですね。

乗った途端に乗客に観光パンフレットを手渡したり、
要所要所では、ナレーション口調ではなく会話しているような感じで観光案内をしてくれます。
場合によっては、お客さんに個別に観光アドバイスをしてくれたりと、心配りという意味では本当に満点だったと思います。


二つ目に、「ぬれ煎餅」です。
ご存じの方も多いと思いますが、銚子電鉄は2006年に経営難に陥り、ぬれ煎餅を使った起死回生の一策を講じました。
これがインターネットをはじめ、様々な媒体で話題となり、「ぬれ煎餅」は銚子電鉄の代名詞となりました。
ぬれ煎餅は生産が追いつかない状況になり、確実に支援の”一の矢”となっていたわけですが、
東日本大震災の煽りを受け、銚子電鉄は自主再建を断念し、新たな方向性を模索している状況にあります。

このぬれ煎餅ですが、犬吠駅で降りてみると、なんと駅舎の中でぬれ煎餅を手焼きしているんです。
そして、降りた乗客は、そういったエピソードを知っていますから、間違いなく買うんですね。
下手すると乗車券よりもぬれ煎餅の売り上げのほうが多いんじゃないかというほど、大人気でした。

銚子市内の別の施設に行ってみると、ここでも手焼き。
犬吠埼灯台のお土産屋さんでも手焼き。
至るところにぬれ煎餅を販売しているお店があるんです。
そんなにぬれ煎餅を売ってたら競合してしまうんじゃないか…とも思うのですが、徹底的にぬれ煎餅。
もはや、銚子電鉄だけがどうこうって話じゃありません。

これは、銚子が醤油の街だということもあるんでしょうが、
”銚子電鉄を核として銚子を盛り上げていこう”という思いがあるんじゃないかと思います。
ある意味、ぬれ煎餅と銚子電鉄に銚子市自体が救われた部分もあるのかもしれません。


三つ目は、銚子電鉄の思いです。

銚子電鉄は、言わずもがな電気で動いている鉄道です。
ところが、駅舎の張り紙にはこう書いてあります。

“銚子電鉄の動力は電気ではございません。
 皆様の温かい応援を動力に運行しております。”


これを見た時、思わず泣きそうになりました。
生半可な気持ちでは、こんなことは書けません。
ぬれ煎餅で救われた銚電の、心からの思い、本心なんだと思います。


銚子自体が非常に温かい土地柄であり、人柄なんですよね。
そういった風土の中で、こういった銚子電鉄のような”温かい鉄道”が運行されていると思うと、感慨もひとしおです。
2ちゃんねるの有志が銚子電鉄を支援した際の寄せ書きなども駅舎に飾ってあったりと、その端々に様々な人に対する感謝の心をうかがうことができました。

2008年に催行された2ch有志による銚子電鉄・沿岸バスツアー寄せ書き

色々な取り組みをしているところはあります。
こういった取り組み自体は、力の入っている私鉄なら珍しくない光景かもしれません。
ただ、ふらっと来た人が気持ちよく幸せな気分で帰れるところって、滅多にないんです。
「おもてなし」という言葉に囚われず、自然と本当のおもてなしができているんですね。
心からお客さんを歓迎して、どうすればもっと気分よく観光できるかを考え、自分たちができる範囲で精いっぱいやるということ。
銚子電鉄は、そういった”本当に大事なところ”ができているのです。

銚子電鉄最大の駅 犬吠駅

犬吠埼灯台・犬吠埼
犬吠埼灯台は、千葉の東端から太平洋を一望に見渡す高さ31.3メートルの灯台で、日本に現存する第1等灯台5つのうちのひとつです。(他には出雲日御碕灯台など)
犬吠埼というと岬を思い浮かべますが、その岬の上にこの犬吠埼灯台があり、岬部分は極めて少ないので、犬吠埼灯台=犬吠埼と捉えてもらうのが一番わかりやすいと思います。

犬吠埼灯台と珍しい真っ白に塗られた郵便ポスト

犬吠埼灯台へ行く途中にある犬吠埼マリンパーク

99段の階段を上り終わり、最後の鉄階段を上りきると、そこからあたりを一望することができます。
展望台が円状になっていることも手伝って、太平洋を”まるく”捉えることが出来ます。
この日はやや雲が多く、快晴とまではいきませんでしたが、灯台の上から眺める太平洋はやはりよかったです。

太平洋を見渡せる

北には君が浜が広がる

南側

犬吠埼の突端

また、灯台の敷地内にある資料館には初代のでっかいレンズが展示されていたのですが、
展示スペース内でぐるぐ回転していて、度肝を抜かれました。
まさに超弩級の迫力で、一見の価値はありますので、灯台だけではなく資料館もお尋ねください。

結構な勢いで回るレンズ(初代)

ご覧のとおり

360度回転致します

なお、犬吠埼自体に遊歩道はあるのですが、津波の影響で危険ということで岬までは下りられないのが残念でした。

犬吠埼と遊歩道に降りる道

地球の丸く見える丘展望台
犬吠埼から内陸に入ること徒歩20分くらい。
標高90mを誇る地点にこの「地球の丸く見える丘展望台」はあります。

展望台の様子

展望台が丸く整備されているのが特徴で、太平洋はおろか、内陸部もしっかり見渡せるので、
腕から突き出したこぶしのような、独特な銚子の地形を垣間見ることができます。
なお、快晴ですと筑波山や富士山を見ることもできるそうです。

展望台からの眺望(南)



北東

北西

ここで印象的だったのは、この展望台が日本とフィリピンの友好を象徴する意図があったということ。
日比友好の碑はインパクトが強かったです。

日比友好の碑とモニュメント

展望台最高地点には日本とフィリピンの位置が記された地図が描かれている

満願寺
遠くからでも目に飛び込んでくるのは、いかにもFateのギルガメッシュが好きそうな黄金の塔。
地球の丸く見える丘の近くに位置する満願寺です。
銚子市街にある飯沼観音・圓福寺の奥の院にあたります。

目が明く金色

満願寺山門

いいぜ(ry

そのふざけた(ry

中に入ってみると、神社のような感じもあり、神仏習合の影響を大いに受けているなあという印象がありましたが、建物自体かなり立派。
特に金の塔(薬師堂だったと思います)だけでも一見の価値はあります。
ちなみに特に拝観にお金はかかりませんので、気軽に入ってみていいと思います。

境内の様子

金ピカの塔を下から

太師堂

外川
銚子電鉄の終着駅である「とかわ」は坂と漁港の町です。
駅舎は木造で味があり、デハ801型が展示されているのですが、
今調べてみたら
古い駅舎を持つ当駅は、多くの作品のロケ地やモチーフとなっている。
堀江由衣の7thシングルCD『Days』のプロモーションビデオなどに使用された。
という文章を見つけて、戻ってきてから「えええええええ」という衝撃に襲われていたりします。

銚子電鉄の終着駅、外川

趣深い木造の駅舎

デハ801系。床が木造とのこと

港は船も多く停泊していて、大漁旗も揺らめいていたりと本当に漁港の風情がありました。
電車の都合もあり20分少々しかなかったので、港と駅を往復しただけでしたが、
とても雰囲気がよかったので、長時間滞在したかったです。

外川漁港の様子

銚子市漁協外川支所

外川は坂の町でもある

飯沼観音・圓福寺
真っ赤な本堂と五重塔、大仏さまが目を引く、銚子電鉄「観音駅」近くにある寺院です。

圓福寺飯沼観音の山門

鮮やかな朱が目を引く五重塔

圓福寺の大仏

敷地もかなり広く、本堂の両脇に立派な庭園があったりと、なかなかいい造りをしています。
「オランダ人技師リンドにより、水準原標石が境内に設置された」という案内看板もありましたが、探してみたものの見つけられませんでした。
どなたか見つけてください…

本堂

いつものように回廊を

銚子漁港
何と言っても銚子は漁業の町。
観音から近いところに漁港があったのでふらーっと立ち寄ってみました。
私が今回寄ったのはかなり手前でしたが、実際は、もう少し東に行ったポートタワーのさらに向こうが銚子漁港のメインのようです。
次は、漁港とか魚メインで来るのも面白いかなと思います。

銚子漁港(けっこう外れのほう)

ヤマサ醤油第一工場
銚子電鉄の仲ノ町駅を降りると、見えてくるのは工場群。
右を見ても左を見ても、前を見ても後ろを見ても、工場、工場、工場。
あろうことか道の上、普通は信号機がありそうな高さのところにも工場のパイプが横切る。
そう、ドラマ「JIN-仁-」でも話題になった、日本の醤油の老舗、ヤマサ醤油の本社と工場は銚子にあります。

「ヤマサ」でお馴染みのヤマサ醤油株式会社。本社は千葉県銚子市

※公道です

公道からでも工場見学

行っているのは主に醤油の醸造

銚子電鉄とヤマサ醤油

例の道路を横切る太いパイプ

これが全部ヤマサ醤油第一工場です

レンガ造り

ちなみに普段は工場見学をすることができるのですが、年始ということもあり工場はお休み。
販売所も閉まっていたようです。
ところが、見学場所の門の前でウロウロしている私を守衛さんが気付いてくれて、あろうことか、
「見学ができなくて申し訳ないので粗品だけは進呈させていただいているんです」
ということで、醤油をいただいてしまいました。
知ってのとおり、私はぶらり旅の身ですから、そんな心づかいは勿体ないくらいですが、
そういう話をしても渡していただけたというのは、素晴らしいことだと思います。
本当にこのやりとりは印象に残りました。

第一工場正門前。守衛のおじさんに感謝

妙福寺
ヤマサの第一工場とは本当に目と鼻の先にある寺院です。

石橋と本堂

とにかく印象に残っているのは、境内にある龍神御瀧。
特に観光地として拝観料とかを取っていないお寺にもかかわらず滝があるというのには本当にびっくりしましたし、その迫力は満点でした。
藤の時期になると藤棚が綺麗なんだそうです。

龍神御瀧

まとめ
今回は、エリアは決めていたものの、形としては”ぶらり旅”でした。
「あ、ここ行きたい」と思ったところに行って、次の電車に走り乗って…
それが上手く噛み合って、想定していた以上に色々なところに行くことができました。

上で紹介したスポットのうち、実は半数以上が当日見つけてふらっと立ち寄ったところでした。
もししっかり計画を立てていたとすれば、おそらくそのうちのいくつかは見落としていたんだと思います。
こういったところに、ぶらり旅のよさを感じました。
たまにはこういう旅もいいですね。

私はこれまで、スケジュールをかっちりさせすぎて、無理矢理回ろうとしてた感がありましたが、
その地に一日留まるのであれば、ぶらり旅でも大丈夫なんだなあというのは強く思いました。



そして、銚子はとてもいいところでした。
銚子の人はとてもホスピタリティ精神が素晴らしいです。
電車の中で、おそらく地元の方であろうおっちゃんに観光指南をしてもらったり、
駅員さんやガイドさんも、マニュアルではない本当に普通の会話、という感じでお話をさせてもらいました。
ヤマサ工場の「申し訳ないので粗品をお渡ししているんです」というエピソードは、まさにその温かさを象徴するような出来事でした。

これって、観光を受け入れる人たちが地元を好きで、「せっかく来てくれた人にいい思いをしてほしい」という心がなければ、絶対にできないんですね。
地元が好きであること。
他から来てくれた人に地元を好きになってほしいという純粋な願い。
そこには、お金も利益も何にもありません。
真の意味での地元愛で、銚子は成り立っていました。
本当に、また行きたいと思える町でした。


今、全国各地で観光の取り組みや町おこしが行われているかと思います。
その中には、今までなかったものを持ちこんで、新たな文化として根付けようとしているものもたくさんあるんじゃないかと思います。
ただ、それって、他地域のお仕着せになっちゃっているところも、少なくないと思うんですよね。
銚子でよかったのは、”銚子らしさ”に合った形で観光を呼び込んでいる部分です。
ぬれ煎餅だって、無理矢理作ったわけじゃなく、ヤマサの工場があって醤油が確保できるからできたこと。
そういった町の歩みと、住んでいる方の思いが一致して、今の銚子の形が出来上がってきたんだと思います。

例えばここに東京の文化を持ち込んだとして、それは”東京ナイズされた銚子”であって銚子ではありません。
東京っぽいところに、東京に住んでいる人が行くかと言えば、行かない。
やはり、観光というのは、その地の特色、”光”があるところを見に行くというのが、あるべき姿なんじゃないでしょうか。
”光を観る”、それが観光です。


おもてなしというのは、丁寧であればそれだけでいいわけじゃありません。
大事なのは”こころ”なんですね。
やはり、人が見ているのは相手の本音や本心なんだと思います。
そういった、当たり前だけど見えない大事なことを、本当に教えられた旅でした。



帰りの電車の中で見た、燃えるように赤い夕日と、
帰ってきてから見上げた空にくっきり見えていたオリオン座は忘れないと思います。
いい旅でした。



執筆 2014年1月4日
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