わ鐡に乗ろう!〜わたらせ渓谷鐡道沿線散歩旅〜

わたらせ渓谷鐡道に乗って、沿線を旅してきました。
今回はどこも本当にいいところばかりで、皆さんにも全力でお薦めしたいので、気合を入れて書きます。
特に「わたらせ渓谷鐡道全線」と「高津戸峡」は、押さえていただきたい要素です。

わたらせ渓谷鐡道

わたらせ渓谷鐡道とは、群馬県は桐生駅から、栃木県の間藤駅をつなぐ、第三セクターの鉄道です。
沿線を渡良瀬川が流れていることから、わたらせ渓谷鐡道と名付けられ、「わ鐡」の愛称で親しまれています。
元々は、足尾銅山へのアクセス路線でしたが、銅山の閉山後は観光路線として活路を見出しています。
厳しい現況の中、赤字経営が続いています。

出発駅は桐生駅。
まずはここから、足尾銅山観光のアクセス駅である「通洞」駅を目指します。

JR・わたらせ渓谷鐡道桐生駅

ちなみに、桐生駅の2つとなり「相老」駅は、日常のゆっこ(相生祐子)の元ネタです。

桐生市相生にある相老駅。桐生市の中心地名は相生という

大間々を過ぎると、観光路線に名前負けしない緑が襲ってきます。
車窓は、圧倒的な緑と、延々と広がるわたらせ渓谷。






わたらせ渓谷としての見どころは、沢入(そうり)駅〜原向(はらむこう)駅と、上神梅(かみかんばい)駅〜本宿(もとじゅく)駅。

沢入〜原向間


それだけではなく、何と線との真横に滝が流れていたり、赤く目立つ橋が何本もあったりと、本当に飽きさせない風景が続きます。
見どころが多すぎて、行き帰り乗っているにもかかわらず、見逃すところが数えきれないくらいあるほど。
まさに「見るとこすべてを写真に撮りたい」くらいの、とんでもない鉄道なんですよ。
観光路線としては、本当に最上級ではないでしょうか。
神々が恋した幻想郷はここにあった。

電車が一緒になった老夫婦と一緒になって写真を撮りながら、電車は足尾へと進みます。

足尾銅山観光

通洞駅
通洞駅でひとまずわ鐡にさよならして、「足尾銅山観光」へと向かいます。
足尾銅山観光は、かつて足尾銅山の「通洞」口として使われていた坑道を、観光客向けに開放した施設です。








まず、トロッコで銅山内へと入り、そこから実際の銅山を歩くことになります。
内部では、「奈良県立民俗うんぬん」のような人形と音声で、開山していた当時の足尾銅山がどんな状態であったかを説明していました。














足尾銅山といえば、やはり我々に印象深いのは「足尾銅山鉱毒事件」ではないでしょうか。
ここでも、鉱毒事件について触れていました。
「暗黒面」について触れているのはよいことだと思うのですが、
ちょっとオブラートに包みすぎているかなあと感じるところはありました。
もっと田中正造について説明があってもいいのではないかと思ったり。

通洞神社

通洞〜間藤(徒歩)
足尾銅山観光を後にし、電車まで時間があったので、間藤駅まで歩くことにしました。
2駅ありますが、この間の距離は3キロ足らずなんですよね。

観光案内所に飛び込んで、思いがけずおすすめのルートが教えてもらえたりと、案内所の方には本当に親切にしてもらいました。
そのおすすめの道を進むと、足尾駅に出ました。


この駅は、足尾と名は付くものの足尾の中心地にあるわけではないのですが、駅舎自体が伝統があり、
また、古くなった電車が眠っているところもあったりします。



渡良瀬川の水の色は銅由来なのかもしれないと仮定

そして、足尾駅を後にして、間藤へと足を進めるのですが…
ここからは、本当に「歩いて欲しいな」と思った所でした。
足尾が持つ「陰」の部分。
「はげ山」です。


わ鐡沿線はあんなに緑が豊かで、あんなに森が生い茂っていたのに。

でも、これは決して陰だけじゃないんです。
昔、かすかな記憶にある足尾って、もっとはげ山だったように思います。
植林運動のおかげで、ここ数年から十年で、確実に回復しているのです。

間藤駅、そしてその先…

歩いているうちに、間藤駅に着きました。
ちなみにここからも、「はげ山」の様子がよく見えます。




そして、今回どうしても行きたかったのは、ここです。





間藤から先が廃止となり、使い道がなくなった踏切。
そして、かつて電車が通っていた、そのことだけを表す線路。
双方とも、現代から忘れ去られた、でもそこに確かにあった、歴史です。

神戸

間藤から戻ること30分、神戸駅。
「神戸!神戸!」でも「カンベソン」でもなく、「ごうど(GODO)」と読みます。
神戸駅もかなり歴史のある駅です。
ちなみに、わ鐡には30か所以上の有形文化財があります。

ここには、大変珍しい施設があるのです。



レストラン「清流」。
なんと、電車がレストランになっているという、通好みの食事どころです。
ここは舞茸天ぷらが有名で、実際かなりおいしかったです。

時間があったので、周囲を散策しました。










わたらせ渓谷鐡道の魅力は、緑の山、渡良瀬川の渓流もさることながら、
昔の田舎の雰囲気が漂っていることにこそあると感じました。
時間の流れが本当にゆっくりなんですよ。
都会の喧騒から離れることが、例え都市から離れた所でも難しくなってきているこの頃、
ここまでその雰囲気が漂っているところなんて、ありませんよ。

わ鐡名物「トロッコわたらせ号」

上の道から撮れました

上神梅
上神梅駅には、わ鐡に数ある有形文化財の中でも最も印象深い、100年を超える歴史を持つ駅舎があります。
この改札を見てもらえば、その古さがよくわかると思います。




上神梅駅に張られていた記事に、こんなことが書いてありました。
「捨ててしまった時代の痕跡」が、このわたらせ渓谷鐡道にはある、と。
本当に、そのとおりですよね。

貴船神社(群馬貴船)
その上神梅駅から、貴船神社へ。
元は京都の貴船神社の分社ですが、初詣においては群馬県随一の初詣客を誇る神社です。



いつも通り、狛犬さん




シーズンでもないので、人はかなり少なかったですが、
かなり落ち着いた趣で、個人的には京都貴船より雰囲気は好きでした。



高津戸峡
上神梅からひと駅、大間々駅から徒歩5分。
そんなところに、この高津戸峡はあります。

正直、期待していなかったというか、とりあえずあるから行ってみよう的な考えでしかありませんでした。


赤い橋が見えてきた段階で相当テンションが上がり、
その端から見えるのは渡良瀬川下流、高津戸峡の絶景。
幻想郷はここにあった。


想定していた範囲を悉く越え、色々な思い入れとか、バイアスとか、そんなちゃちなもんは全部吹っ飛ばし、
感動しかありませんでした。

峡谷が素晴らしすぎました。
あまりの素晴らしさに、人がいないのをいいことに歓声ばかりあげてました。


ゴリラ岩とか、

ポットホールとか、

そもそも橋でいえば高津戸橋や、


はねたき橋。


名所は数あるのですが、
そういったものを全部ひっくるめて、高津戸峡全てが素晴らしいんですよ。

ただ、ポットホールに関してはひとつ逸話ができまして。
ポットホールに行くには、「これ、立ち入っちゃいけないんじゃないか?」という岩場を登っていく必要があるのですが、
実は岩場登りはなぜか得意な私、普通に登っていってしまいました。
その岩場の裏側に、ポットホールがあるんですよね。
ここでもお世話になった観光案内所でその話をしたところ、
前に来た観光客の方は見つけられなかったということ。
まあ、普通あそこの裏にあるとは思いませんからね…
私も変な話、ポットホールを口実であの岩にノボてるのなら登ってるかな…という感じでしたから。


しかし、危険(?)を乗り越えたからこそなのか、そこから見る高津戸峡の素晴らしいこと素晴らしいこと。
和歌山の瀞峡かと思ったくらい、素晴らしい峡谷でいた。








黒部や、耶馬渓にも負けてないと思います。
そして、それらと異なるのは駅からのアクセスの近さ。
黒部は、まずその峡谷に行くまでが既に観光ルートになってしまっていますし、
耶馬渓は、最寄りの駅から2時間弱車で走らないといけない山奥にあったはずです。
ところが、高津戸峡はなんと駅から5分。
最寄駅の大間々だって、それなりの生活圏なのに、こんなに生活に近いところに、あんな峡谷が、自然の姿で残っているのですから、本当に素晴らしいことだと思います。

高津戸峡には、本当に楽しませてもらいました。


道了堂




神明宮


終わりに
わたらせ渓谷鐡道は、存廃問題と共にあります。
多額の赤字を抱えています。

でも。
2008年の朝日新聞で、最も人気がある地方ローカル線に、この「わたらせ渓谷鐡道」が選ばれました。
それは、やはり「私達がどこかで壊したり、無くしたり、捨ててしまった何かが、ここにある」からだと思うんです。

この土地は、鉄道は、
まだ死んでなんかいないわ。

 (「八雲一家のローカル線ぶらり途中下車の旅 わたらせ渓谷鐡道」より、八雲紫)

そう、まだ死んでなんかいません。

確かに赤字です。
でも、こんなに豊かすぎるほどの自然と、足尾という陰陽両の顔を持った歴史を抱えている鉄道が、なくなってしまうのは、悔しい。
千葉のいすみ鉄道が「ここには”なにもない”がある」なら、
わたらせ渓谷鐡道は「ここには、私達が捨ててしまった”何か”がある」。


遠いかもしれませんが、是非とも皆さん、足を運んでみてください。
足を運ぶだけの意味が、歴史が、自然が、ここにはあります。
そうして、この鉄道の、沿線の良さを知ってもらう。
今はそれしか、ないと思うのです。



以上、日帰り旅における「神回」をお送りしました。

執筆 2011年9月17日
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