さよなら周遊きっぷ



JRの「周遊きっぷ」が、今年度で販売終了することになりました。
それは、JR時刻表の「トクトクきっぷ」の欄に確実に載っているのに、あまり知られていないきっぷ。
個人的に、とても思い入れのあるきっぷです。


周遊きっぷは、設定されたゾーン内は乗り放題、「ゆき」と「かえり」の料金が2割引という優れもののトクトクきっぷ(特別企画乗車券)です。
国鉄時代の「周遊券」を前身としたこのきっぷですが、近年はゾーンの縮小・廃止が著しく、大正時代初期から続く周遊型乗車券に幕が下りることとなりました。

「飛騨・奥飛騨」「南紀」「北近畿」「山陰」「津和野・秋芳・萩」など、旅行好きならおおっと歓声を上げるようなゾーン設定。
JRだけではなく、地方の私鉄やバスまでゾーンに盛り込んでしまう実用性。
特定の地域をぐるぐる回るには、これ以上ない、旅行者にとっては夢のようなきっぷでした。

廃止に至った理由は、使っているがゆえによくわかります。
発行手続きが煩雑で、窓口での発行に20〜30分がかかること。
周遊きっぷの知名度があまりなく、駅でも対応に苦慮されるきっぷであったこと。
売れば売るほど儲かるという商品ではないため、採算度外視であり、あまりPRができない性質のきっぷだったこと。


自動改札に対応してないどころか、駅員さんがちょっと戸惑う。
ルールが複雑すぎて、利用者のほうが窓口の人より詳しい。
正直言って、今の時代に合わないきっぷだったかもしれません。

でも、このきっぷがなければ行けなかった、行かなかった所、沢山あるんです。
熊野三山、宗谷岬、宇和島…
周遊きっぷじゃなかったら、周遊きっぷの助けがなかったら、きっと行けなかった。
ゾーンを示すことで、無言で「ここにも行ってみたらいかがですか?」と教えてくれた。
旅行の幅を、少しだけ広げてくれた、ありがたいきっぷ。


周遊きっぷでゾーンに設定されていたエリアって、本当によくまとまっているなと思います。
電車で旅して回るとき、そのゾーンが、大いに参考になるはずです。
周遊きっぷがなくなっても、周遊きっぷが残してくれた”無言の提案”は、きっと生き続けます。

周遊きっぷはなくなりますが、周遊きっぷの思い出は決してなくなりません。


結びに、時代には不釣り合いの優れものなサービスと、周遊きっぷの発行にあたり悪戦苦闘してくれたみどりの窓口の係員さんにお礼を言いながら。
そして、また三度、周遊きっぷが復活してくれることを願っています。
いつもの顔でひょっこり戻ってきて、無言で「ここはいかがですか?」と提案してくれるに違いありません。

丸で囲まれた 遊 マークを、忘れません。


▲旅の記憶



執筆 2013年2月16日
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