ビリービーン×松井秀喜が生み出すベースボール

ゴジラ松井が、オークランド・アスレチックスに移籍したそうです。

私はメジャーリーグの知識は「マネー・ボール」以上のものを持ちえてないくらい疎いです。
ただ、そのマネー・ボールの題材となったのアスレチックスの名物GM、ビリー・ビーンのコメント
「うちのチームには狙って犠飛を打てる選手がいない。松井はそれが出来る選手だ。期待している。」
に“流石”と思わされたので、そのことについて書いてみようと思います。


ここで松井という選手がどういう選手かを振り返ってみます。

たぶん、皆さんが満場一致で持つイメージとしては「人気者のホームランバッター」でしょう。
実際、ホームランダービーに毎度のごとく食い込み、タイトルを3回取っています。

ところが、渡米してから、松井のイメージはがらりと変わりました。
その名も「勝負強いクラッチヒッター」。
クラッチヒッターというのは、チャンスで打点を稼ぐバッターのことです(ホームランバッターではない)。

これが、見落とされがちな松井の本当の凄いところなのです。
もともと、松井は打撃センスが非常に優れているんですね。
しかし、首位打者を取ったこともある打者だということは、なんとなく忘れられがちです。
ここまでの通算打率はなんと2割9分4厘。
30台も後半にさしかかった今ですら2割9分は打っているのですから、相当高いと言えるでしょう。

巨人にいた頃の松井は、少年達のためにひたすら甘いボールを待ってホームラン狙いに徹していた、という逸話もあるくらいの引っ張り打者でした。
それがメジャーに行って、身の丈にあったという言い方は変かもしれませんが、自分を最大限に出せるスタイルに転向したわけです。


そして今度は、記録のひとつ、「打点」に注目してみます。
奇しくも「マネー・ボール」が発売された2002年ごろから、野球のデータが詳しく分析されるようになりました。
野手だと出塁率やOPSなど。
その中で、既存の「打点」の重要性が薄れてきたような印象が、私はありました。
その理由としては、だいたいが得点圏打率といっしょくたにされるのですが、
「打点は打順によるところが大きい」といったこと。
実際、打順によって打点は大幅に変わってくるので、ほぼ正しいと思います。

ただ、野球ゲームを好まれる方ならピンと来るかもしれません。
1アウト三塁の場面で欲しいのは何かといえば、望ましいのは安打ですが、最低限進塁打でいいのです。
犠飛でもいい、ボテボテの内野ゴロだって、三塁走者が突っ込めば打点1です。

この「打点1」は、狙って打たないと取れません。
三冠王三度の落合も、打点を稼ぐ技術があると言っています。
実はそのくらい、打点を稼ぐということは重要なのです。
ある意味、ホームランよりも、打率よりもよっぽど実際に即した成績なのではないかと思います。


そして松井の話に戻しますと、実は打点王三回。
既にプロ野球の時代から、チームバッティングをしていたということがわかります。
まあ、前に仁志や清水、高橋がいたという恵まれた状況ももちろんあるでしょうが、
チームバッティングができていないと打点王なんて取れませんからね。


そして流石なのがビリー・ビーンです。
正直言って、メディアの松井に対する論調は、最近辛口でした。
しかし、成績を見てみるとそうでもなく、それなりの成績を残しています。
松井の持つ卓越した打撃技術をビリー・ビーンは買ったのでしょう。
もしかしたら松井の状態がよくないという噂を流したのもこの人の可能性があります。


新天地のクラッチヒッターはどこまで活躍するのか。
期待が高まります。
せっかくイチローと同じリーグになったので、大いに話題になって欲しいですね。


執筆 2010年12月16日
コラム TOPへ戻る